
topet編集部
愛猫の口元を見て、「歯が欠けているように見える」「前より歯が少ない気がする」と感じたことはありませんか?
猫の歯に起こる変化のひとつに、「歯の吸収(Tooth Resorption:TR)」があります。
歯の吸収とは、歯の組織が少しずつ失われていく病気です。進行すると歯が欠けたように見えることがありますが、外から見ただけでは気づきにくいケースもあります。
以前は「猫の破歯細胞性吸収病変(Feline Odontoclastic Resorptive Lesion:FORL)」と呼ばれることが多く、日本語の文献では「猫破歯細胞性吸収病巣」と表記されたものもあります。現在は、より広く「Tooth Resorption(TR)」という名称が使われています。
今回は、猫の歯の吸収について、研究やガイドラインでわかっていることをもとに、飼い主さんが知っておきたいポイントをわかりやすく紹介します。
※本記事は2025年のFelineVMAガイドラインや専門文献をもとに作成しています。

猫の「歯の吸収」ってどんな病気?
歯の吸収は、歯の組織が少しずつ失われていく病気です。
歯の表面に変化が現れ、進行すると歯が欠けたように見えたり、歯の一部がなくなったりすることがあります。
特徴的なのは、見た目だけでは状態を判断しにくいことがある点です。
2025年に公表されたFelineVMAの猫の口腔・歯科ケアガイドラインでも、歯の吸収は猫でよく見られる歯科疾患のひとつとして扱われています。また、歯の内部や根の部分に起こる変化を確認するためには、歯科用レントゲン検査が重要とされています。
そのため、「歯が欠けているように見えるから、単純に歯が折れただけ」とは限りません。
猫の歯の吸収は珍しい病気ではない
猫の歯の吸収は、決して珍しいものではありません。
ただし、研究によって報告されている割合には大きな幅があります。
2001年に発表された研究では、健康な猫228頭を調べたところ、29%に歯の吸収が確認されました。また、年齢が高くなるほど発生するリスクが高くなる傾向も報告されています。
一方、歯科治療を受けた猫120頭を対象にした研究では、79頭、つまり66%に歯の吸収が確認されました。10歳以上では83.3%でした。
「29%と66%では、どちらが正しいの?」と思うかもしれません。
実は、どちらも研究として得られた結果です。
健康な猫を対象にした研究と、歯科治療を受けた猫を対象にした研究では、そもそも調べている猫の集団が違います。そのため、これらの数字を単純に比較することはできません。
大切なのは、猫では歯の吸収が比較的よく見られる病気であると知っておくことです。

猫の歯の吸収(TR)の原因とは?予防法はある?
気になるのが、「なぜ歯の吸収が起こるのか」ということではないでしょうか。
しかし、実はその原因については、まだわかっていない部分があります。
年齢との関連などは研究されていますが、すべての猫に共通する明確な原因がわかっているわけではありません。 2025年のFelineVMAガイドラインでも、歯の吸収は重要な歯科疾患として取り上げられていますが、その発生の仕組みにはまだ解明されていない部分があります。
つまり、
「これをすれば歯の吸収を防げる」という方法が確立しているわけではありません。
ここは、歯垢や歯石が関係する歯周病などとは分けて考える必要があります。
歯磨きをすれば歯の吸収を防げる?
「歯の病気なら、歯磨きをすれば防げるのでは?」と考えるのは自然なことです。
猫のお口の健康を保つために、歯垢を減らすケアは大切です。
ただし、歯磨きをしていれば歯の吸収そのものを防げる、とは現在の研究から言えません。
歯の吸収は原因が完全には解明されておらず、確実な予防方法も確立されていません。
だからといって、口腔ケアが必要ないということではありません。
歯の吸収と、歯垢・歯石、歯肉炎、歯周病などは別の問題として考えることが大切です。
「歯の吸収を防ぐため」だけではなく、「愛猫のお口全体を健康に保つため」という視点で、毎日のケアを考えてみましょう。

猫の歯が欠けた時のチェックリスト|見逃しやすい初期症状とサイン
歯の吸収では、口の中に痛みや違和感が生じることがあります。
ただ、猫は痛みがあっても、必ずしも飼い主さんにわかりやすいサインを見せるとは限りません。
そのため、普段の生活の中にある小さな変化が手がかりになることがあります。
たとえば、
- 食べ方が以前と変わった
- 硬いものを避けるようになった
- 食事中に口元を気にする
- よだれが増えた
- 口臭が変わった
- 口元を気にする仕草が増えた
- 歯が欠けたように見える
- 片側だけで噛んでいるように見える
などです。
ただし、これらの変化があったからといって、歯の吸収と決めつけることはできません。
大切なのは、「いつもと違う」という変化を見逃さないことです。
「普通に食べているから大丈夫」とは限らない
猫のお口のトラブルでは、飼い主さんが気づきにくいケースがあります。
歯の吸収があっても、家庭では明らかな症状が見られないことがあるためです。2025年のガイドラインでも、猫のお口の状態を日常的に観察することが重要とされています。
「ごはんは食べているから大丈夫」と思うだけではなく、
・食べる量だけでなく、食べ方を見る。
・口元だけでなく、普段の行動を見る。
そんな視点を持つことも、愛猫のお口の変化に気づくきっかけになります。
歯が欠けて見えたら、自己判断しないことも大切
猫の歯が欠けているように見えた場合、歯の吸収だけでなく、歯が折れるなど別の原因も考えられます。
また、歯の吸収は歯の表面だけを見ても、内部の状態まで判断できない場合があります。
そのため、
・行動の変化: 硬いものを避ける、片側で噛む、食事中に口元を気にする、よだれが増えた
・見た目・口内の変化: 歯が欠けて見える、歯が減った気がする、口臭が変わった
といった変化があれば、動物病院で相談しましょう。
歯の吸収を詳しく確認するためには、歯科用レントゲン検査が重要とされています。

毎日の口腔ケアは「病気を防ぐ」だけではない
歯の吸収には、まだわかっていないことがあります。
だからこそ、
「歯磨きをしているから安心」
「歯磨きができていないから病気になった」
と単純に考えるのではなく、毎日の口腔ケアを愛猫のお口を知る習慣として考えることが大切です。
歯を磨く。
口元を観察する。
食べ方を確認する。
できることから少しずつ続けることで、普段の状態がわかりやすくなります。
そして、普段を知っているからこそ、「いつもと違う」という変化にも気づきやすくなります。
愛猫のお口で「いつもと違う」に気づくために
猫の歯の吸収は、原因が完全にはわかっておらず、家庭でのケアだけで防げる病気でもありません。
それでも、飼い主さんにできることがあります。
それは、愛猫のお口と普段の様子を知っておくことです。
「今日は食べ方が少し違う」
「口元を気にしているように見える」
「歯が前と違って見える」
そんな小さな気づきが、お口の状態を見直すきっかけになるかもしれません。
毎日の口腔ケアは、何かひとつの病気を防ぐためだけのものではありません。
愛猫がこれからも気持ちよく食事を楽しめるように、毎日の暮らしの中でお口に目を向ける習慣。
そんなところから、愛猫のお口の健康を考えてみてはいかがでしょうか。
猫の歯の吸収に関するよくある質問
Q1. 猫の「歯の吸収」とは何ですか?
歯の組織が少しずつ失われていく病気です。進行すると歯が欠けたように見えることがありますが、外からはわかりにくい場合もあります。
Q2. 猫の歯の吸収は以前、何と呼ばれていましたか?
以前は「猫の破歯細胞性吸収病変(Feline Odontoclastic Resorptive Lesion:FORL)」と呼ばれることが多く、日本語の文献では「猫破歯細胞性吸収病巣」と表記されたものもあります。現在は「Tooth Resorption(TR)」という名称が使われています。
Q3. 猫の歯の吸収は多い病気ですか?
研究によって異なります。健康な猫228頭を対象とした研究では29%、歯科治療を受けた猫120頭を対象とした研究では66%に歯の吸収が確認されています。ただし、調査対象が異なるため、数字を単純比較することはできません。
Q4. 猫の歯の吸収は年齢と関係がありますか?
年齢が高くなるほど、歯の吸収が確認されるリスクが高くなる傾向が複数の研究で報告されています。
Q5. 歯磨きで猫の歯の吸収を防げますか?
歯磨きはお口の健康を保つために大切なケアですが、歯磨きによって歯の吸収そのものを確実に防げるとは、現在の研究からは言えません。
Q6. 猫の歯が欠けているように見えたらどうすればいいですか?
歯の吸収だけでなく、歯が折れるなど別の原因も考えられます。見た目だけでは判断しにくいため、歯が欠けたように見える、食べ方が変わったなどの変化があれば、動物病院で相談しましょう。
・普段のごはんと一緒によく噛んで食べることで、歯垢・口臭を軽減!
・粒を専用ミルにいれて2~3回擦りながら、ごはんにかけるだけで手間いらず。
・1日55円からはじめられる!
まとめ
- 猫の「歯の吸収(TR)」とは:歯の組織が少しずつ溶けて失われる病気で、高齢猫ほど発症率が高まります。
- 原因と予防:原因は未解明で、歯磨きだけで確実に防ぐことはできません。
- 飼い主ができること:食べ方や口元の小さな変化(サイン)を見逃さず、違和感があればすぐに動物病院(歯科レントゲン検査)で相談しましょう。
参考文献・資料・ガイドライン
日本語資料
・Cedric Tuttほか「猫破歯細胞性吸収病巣(FORLs)―最近の文献からの見解」J-vet : journal for veterinary practitioner 18(10), 2005, p.72–75。藤田桂一訳。
・藤田桂一「猫の歯肉口内炎と破歯細胞性吸収病巣の特徴と治療」動物臨床医学会年次大会プロシーディング、31st、1、2010、p.128–132。
海外の研究・ガイドライン
・Lobprise H, St Denis K, Anderson JG, et al. “2025 FelineVMA feline oral health and dental care guidelines.” Journal of Feline Medicine and Surgery. 2025;27(11).
・Ingham KE, Gorrel C, Blackburn J, Farnsworth W. “Prevalence of odontoclastic resorptive lesions in a population of clinically healthy cats.” Journal of Small Animal Practice. 2001;42(9):439–443.
・“Prevalence of Tooth Resorptive Lesions in 120 Feline Dental Patients in Israel.”
・Gorrel C. “Tooth resorption in cats: pathophysiology and treatment options.” Journal of Feline Medicine and Surgery. 2015;17(1):37–43.
※この記事は、公開されている研究・ガイドライン・文献情報をもとに、猫の飼い主向けに一般的な情報を整理したものです。特定の猫の症状や治療について判断するものではありません。





