犬の下痢にじゃがいもが効果的ですか?という質問を良く頂きます。結論から申し上げると犬の下痢にじゃがいもは効果があります。
しかし、下痢の状態によっては逆効果にもなりますので、じゃがいもを愛犬に与える際の注意点を必ず確認して下さい。
そもそも犬はじゃがいもを食べられる?
じゃがいもは加熱すれば愛犬に与えても問題ありません。じゃがいもにはデンプン分解酵素であるアミラーゼが含まれており、加熱するとアミラーゼがでんぷんに作用して糖を作るため甘くなります。
甘くなることで犬の嗜好性(食いつき)が高まります。また、生のままだと消化に悪く下痢や嘔吐の原因になるため、必ず蒸したり茹でたりして火を通しましょう。
また、スイートポテトなどのじゃがいもの加工品は糖分を多く含むだけではなく、カロリーが高いため与えることをおすすめしません。
・じゃがいもは加熱すれば犬に与えても問題なし。
・生のままは下痢や嘔吐の原因になるため犬に与えてはいけない。
・じゃがいもの加工品も糖分やカロリーの観点からおすすめしない。
じゃがいもの犬に対する有効成分と効能
じゃがいもは芋類の中でもエネルギーが高く、栄養分が豊富な食べ物です。ここではじゃがいも(皮なし、蒸し)の栄養成分と犬に対する効果を説明します。
100g中に含まれる食品成分(文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより)
エネルギー | 76kcal |
水分 | 78.8g |
タンパク質 | 1.9g |
脂質 | 0.3g |
炭水化物 | 18.1g |
灰分 | 0.9g |
ビタミンB3(ナイアシン)
ビタミンB3は、セラミドの合成を促進して皮膚を乾燥から保護する役割があります。そのため、欠乏すると皮膚炎になる可能性があるビタミンです。
ビタミンB5(パントテン酸)
ビタミンB5は、炭水化物、脂質、タンパク質など多くの栄養素の代謝に関わっており、セラミドの合成を促進して皮膚を乾燥から保護する役割があります。
ビタミンC
ビタミンの中でも強い抗酸化作用を持ち、免疫力を維持する働きが期待できます。また、犬の皮膚や関節に重要な成分であるコラーゲンとの関わりが強いと言われており、皮膚や関節の健康維持も期待されています。
食物繊維
食物繊維は小腸で消化・吸収されずに大腸まで到達し、便を柔らかくしたり大腸を刺激することで排便を促す効果が期待できます。また、食物繊維の食べ過ぎは下痢の原因にもなりますので注意してください。
カリウム
カリウムは神経系の働きに重要な役割を持つミネラルです。過剰なナトリウム(塩分)を体外へ排出することで、血圧を安定させる効果もあります。
じゃがいもの犬に対する有効成分
・ビタミンB3(ナイアシン)
・ビタミンB5(パントテン酸)
・ビタミンC
・食物繊維
・カリウム
犬の下痢にじゃがいもは効果的?
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。じゃがいも100gに0.5gの水溶性食物繊維と1.1gの不溶性食物繊維が含まれています。
腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌といった菌が存在し、それぞれのバランスが崩れると下痢になりやすくなります。下痢になりにくい腸を作るためには善玉菌を増やすことが大切になってきます。
水溶性食物繊維は摂取することで善玉菌のエサになり、腸内環境を整える働きがあります。そのため、じゃがいもは腸内環境の乱れが原因による下痢の犬には効果が期待できると言えます。
また、じゃがいもは不溶性食物繊維も豊富に含むことから、普段から軟便の犬には便の硬さを整えるという意味で与えても良いでしょう。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は体内で水に溶けてゲル状になり便を柔らかくします。また、善玉菌のエサとなることで、犬の腸内環境を整える効果が期待できます。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は、便の量を増やして大腸を刺激することで排便を促します。しかし、犬は草食動物のように発酵槽を持たないため、不溶性食物繊維はすぐに大腸を通過してしまい、善玉菌のエサとなることで腸内環境を整える効果は発揮し難いと言われています(※)。
※ 石岡 克己 (2021) “犬と猫における消化器疾患と栄養”
犬の下痢にじゃがいもは効果的?
・下痢になりにくい腸を作るためには善玉菌を増やすことが大切
・じゃがいもに含まれる水溶性食物繊維は腸内環境の乱れが原因による下痢に効果的
・軟便の犬には、じゃがいもに含まれる不溶性食物繊維が便の硬さを調整
犬のこんな下痢にじゃがいもはNG
腸内環境の乱れにより下痢をしやすい犬には、下痢になりにくい腸内環境を作る目的でじゃがいもを与えることは良いです。
一方で、愛犬の下痢が続いている場合やかなり水っぽい下痢をしているなど、下記の症状がある場合は病気やウイルス感染などによる下痢の可能性があります。
そんな下痢にじゃがいもは決して有効ではありません。必ず動物病院に相談してみることをおすすめします。
こんな時は動物病院に相談
・下痢を何日も続いている
・かなり水っぽい下痢をしている
・血が混ざっていたり、色が黒い便をしている
・体重が減少している
犬にじゃがいもを与える際の注意点
腎臓や心臓に疾患がある犬に
愛犬の腎臓機能に疾患があるとじゃがいもに含まれるカリウムが溜まりやすくなり、不整脈など心臓に影響を及ぼす可能性があります。
肥満や糖尿病の犬
じゃがいもは芋類の中では糖質は低めですが、野菜の中では糖質が比較的高く、摂りすぎることで血糖値を下げるためインスリンが分泌されます。そのため、肥満や糖尿病の犬はなるべく食べないほうが良いです。
消化機能が弱い子犬やシニア犬
じゃがいもは食物繊維量が多いため、消化機能が弱い犬に与えると、下痢を引き起こす可能性があります。そのため、消化機能が弱い傾向のある子犬やシニア犬には注意して与えてあげてください。
じゃがいもを与える量
じゃがいもは100gあたり76kcalのエネルギーを含みます。そのため、与えすぎることでカロリー過多とならないように注意しましょう。
犬は体型や活動量など、個体によって1日に必要なカロリーが異なります。愛犬が1日に必要なカロリーを把握することで、おやつや食事の量を適切にコントロールしてあげましょう。
▼愛犬の1日に必要なカロリーを知るには下記記事がオススメです。
じゃがいもを与える際の注意点
・腎臓病や心臓病の犬
・肥満や糖尿病の愛犬
・消化機能が弱い子犬やシニア犬
・じゃがいもを与える量
まとめ
・犬の下痢にじゃがいもが有効ですか?という質問を良く頂くため、栄養学的な観点でまとめました。
・じゃがいもにはビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンC、食物繊維、カリウムが含まれています。
・じゃがいもを食べることで食物繊維による整腸作用が期待できますが、食べ過ぎは下痢の原因になるため注意してください。
・下痢が続いている場合やかなり水っぽいひどい下痢をしている場合はじゃがいもを与えず、まずは病院に相談することをおすすめします。
・じゃがいもは腎臓や心臓に疾患がある犬には注意してください。また、消化機能が弱い子犬やシニア犬は下痢を引き起こす可能性があるので注意してください。