犬が痒みを感じるとき、飼い主としてはすぐにでも対処してあげたいものです。犬の痒みにはさまざまな原因があり、それぞれに適切な対応が必要です。この記事では、犬の痒みの一般的な原因と、家でもできる効果的な応急処置、さらに長期的な対策方法を分かりやすく解説します。
犬が痒がる際の行動
犬が痒みを感じるとき、しきりに体をかゆがったり、噛んだり、舐めたりする行動が見られます。
痒みの強さによっては、皮膚が赤くなったり、毛が抜けたり、傷ができることもあります。これらの症状は、犬が心地よさを求めて自らを害してしまうほどの不快感を示している証拠です。犬が痒いときに一般的にみられる行動は以下です。
- 体をかく: 痒い部位を前足や後足で激しくかく。
- 体をこする: 壁や床に体をこすりつける。
- 皮膚を噛む: 痒みのある部分を口で噛む。
- 舐める: 痒い箇所を何度も舐める。
- 不機嫌になる: 痒みによりイライラし、普段と異なる行動をとる。
また、犬が痒みを感じた際の行動で皮膚に以下のような症状が出たりします。
- 皮膚の赤み: 激しいかき傷による皮膚の発赤。
- 脱毛: 頻繁に同じ部位をかくことで毛が抜けたり、薄くなる、ハゲている。
- 湿疹や皮膚炎: 長期間の刺激による皮膚の炎症。
- 熱を持つ: 激しい摩擦や炎症による皮膚の温熱感。
- 乾燥: フケが出ている。乾燥感がある。
痒みの原因を特定し、最適なケアを提供することで、愛犬の不快感を和らげることが大切ですが、症状によってはすぐに病院での診察が必要なケースもありますので代表的なものを見ていきましょう。
代表的な犬の痒みの原因と対応
犬が痒がっているいくつか代表的な原因や病気を解説します。
アレルギー性皮膚炎
犬のアレルギーの原因物質に反応して、発症する皮膚炎です。
原因: 実際には、アレルギー性皮膚炎は以下の3パターンに分かれます。
- 犬のアトピー性皮膚炎:環境アレルゲンに対するアレルギーに起因します。
- 食物アレルギー:食べ物が原因のアレルギーに起因します。
- アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの混合型もあります。
ただ、見た目だけでは、アトピー性皮膚炎なのか食物アレルギーなのか、区別することは難しいと言われています。
対応:痒みを伴う皮膚炎に対し、寄生虫や微生物などの病原体の有無を確認し、それらが除外されたうえでも痒みが残る場合、アレルギー性皮膚炎が疑われます。食物アレルギーの場合は、採決からのアレルギー検査(検査項目が多いほど費用がかかる)によってアレルゲンを特定し、食事管理を行います。混在している場合は、食物アレルギーに対しての食事療法と、犬アトピー性皮膚炎に対しての内科治療の両方を平行して行う
アトピー性皮膚炎
犬のアトピー性皮膚炎は、よく見られる一般的な皮膚病で、人のアトピー性皮膚炎と共通点の多い病気です。
環境アレルゲン(花粉、ダニ、カビ)、食物アレルゲンによって引き起こされ、アレルギーが原因の一つなので、他の犬にはうつりません。
皮膚が赤くなったり、色素沈着でシミのような黒ずみが残ることもあります。痒みを伴い、耳や顔、足の指の間、脇の下、お腹周り、足や尾っぽの付け根などに症状が現れやすくなっています。
比較的若いうち(生後6ヶ月〜3歳)に発症することが多く、犬種ではトイプードル、柴犬、シーズー、フレンチブルドッグ、ミニチュアダックスフンド、ラブラドールレトリバー、ヨークシャーテリア、ウエストハイランドホワイトテリアで多いようです。
原因: 遺伝的要因と環境要因の両方が影響して発生するアレルギー性の病状で多因子疾患と言われています。主な原因には、ハウスダストや花粉、カビ、動物のフケなどの環境アレルゲンへの過敏反応が含まれます。これらのアレルゲンに対する免疫系の過剰反応により、犬は激しいかゆみを感じ、皮膚に赤みや脱毛、湿疹が生じることがあります。
対応:
アトピー性皮膚炎は完治することは難しく、症状の管理とアレルゲンを避けることが主な治療法となります。
病院からの治療薬はステロイドが有名ですが、炎症や痒みを軽減するために勧められることが多いです。ステロイドは副作用があり、これをコントロールするために適切に使う必要があるので、お医者さんの指示に従いましょう。
抗ヒスタミン剤は、抗ヒスタミン薬は古くから使われているお薬で皮膚に痒みを起こすヒスタミンという物質をブロックする働きがあり、人の花粉症によく使われているお薬です。
シクロスポリンは、過剰な免疫を抑える薬で、、アレルギーやアトピーの症状を軽くする効果がありますが、効果が出るのに1か月程度など、比較的時間がかかこともあります。
治療薬は、その他も多くの種類がありますので処方された際に名前を憶えてチェックしてみましょう。
また、薬以外の方法では、刺激の少ないシャンプーでの洗浄や、アレルギー源からの隔離、食事の見直しや乳酸菌サプリメントの摂取などが考えられるでしょう。
マラセチア皮膚炎
犬のマラセチア皮膚炎は、カビの一種であるマラセチア(酵母菌)が急激に増殖することで皮膚に炎症が起こる病気です。マラセチアというカビが皮膚でたくさん増えている状態ですね。マラセチアは健康な犬にも存在する菌(常在菌)で通常は存在しても問題になりません。
原因:増殖を促す条件には、高湿度、免疫力の低下、皮膚の過度の油分、アレルギー、ホルモン異常があります。皮膚に赤みやフケ、ベトベト感が強くなったりします。慢性期になると臭いや、皮膚の色素沈着や皮膚が分厚くゴワゴワします。脇や内股、指先などしわが多い場所や擦れやすい場所でできることが多いです。
対応: 痒みが強くでるので、犬もつらいため早期発見が大事で、早めに病院に連れていくことが大切です。動物病院では、皮膚にセロハンテープなどを貼り付けて皮膚の表面にいる細菌や真菌を採取し顕微鏡で観察します。マラセチア菌の過剰増殖を確認します。増殖していた場合はマラセチア皮膚炎と診断されます。その他に血液検査や、超音波検査などをして基礎疾患がないか探すこともあります。
- 内科療法として、抗真菌薬・抗菌薬を用いた治療が一般的です。
- 外用療法として、薬用シャンプーでの洗浄します。角質を溶かす角質溶解作用とマラセチアを倒す抗真菌作用があり、物理的にマラセチアを減らします。
- 抗炎症療法として、ストロイドやアポキルのような即効性のある痒み止めやアレルギー反応を抑えるシクロスポリンを使うことが多いです。痒みがひどい子や慢性化している子に用いられます。
また、マラセチアが過剰に増える環境(湿気が高い場所や皮脂が多いなど、カビの餌がある場所、掃除しずらい場所)になっていないかも考慮することが大切です。
膿皮症
犬の膿皮症は細菌感染によっておこる皮膚炎のことです。犬の典型的な膿皮症は毛穴に一致した膿(白ニキビ)ができるや、円形のかさぶた、虫食い状の脱毛が挙げられます。寄生虫が皮膚に付着し、刺激やアレルギー反応を引き起こす。
原因:原因菌としては、ブドウ球菌(S.pseudintermedius)の細菌によって起こるが多く、顎や指の間、お腹、肛門周囲に生息する常在菌です。毛づくろいで全身に拡散されると言われています。
対応: 適切な駆除薬の使用と環境管理で対応します。
- 薬用シャンプー洗浄と消毒:殺菌効果があり、細菌に対する耐性がないので効果的です。
- 抗菌薬:複数や全身に膿皮症がある場合は使用されることが多いです。使用から14日程度で効果があるかをチェックします。
- 基礎疾患の治療:膿皮症の治りが悪かったり、繰り返す場合に基礎疾患が隠れているかなどを検討します。
近年、腸では、善玉菌や悪玉菌のバランスが大事なことや腸内細菌叢という言葉が認知されていていますが、皮膚も同様に細菌叢があり、善玉菌が悪玉菌の増殖や定着を防ぐような免疫機構が備わっていると言われています。
免疫が落ちている子や、持病がある子は膿皮症には特に注意が必要です。
犬の痒みの原因はその他にも多々ありますので、まずは犬の行動や症状の特徴を把握することから始めましょう。
効果的な応急処置
犬が痒みを感じる際は、痒みの根本的な原因を特定するために、定期的な動物病院での診断や検査が必要になりますが、並行して家でも簡単に取り組める応急処置には、以下の方法が効果的です。
冷却
痒みがある部位に冷湿布を当てて、炎症を抑えます。これは一時的な痒みの軽減に役立ちます。
生活環境の整備
- 清掃: 定期的に部屋を掃除して、ハウスダストやアレルゲンの蓄積を防いだり、菌の繁殖を防ぎます。
- 空気清浄機: アレルゲンや埃を取り除くために、空気清浄機の使用が効果的です。またジメジメしないよう湿度管理も大切です。
- ノミ駆除: ノミの予防として、環境スプレーや定期的なペット用の駆虫薬の使用が推奨されます。
日常的なスキンケア
定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保ち、抗菌・抗真菌成分含有の薬用シャンプーを選ぶことが望ましいです。シャンプーは皮膚を刺激しないように優しく行い、完全にすすぐことが重要です。
また、抜け毛や毛玉をそのまま放置していると皮膚トラブルにつながるため、定期的なブラッシングを優しく丁寧に行ないましょう。
食事の見直し
- 添加物排除: 添加物を含まない自然な食材のドッグフードや食べ物を選びましょう。
- アレルギー対応: 食物アレルギーの把握を行い、アレルギーに該当する場合は除いてあげるなど管理してあげましょう。アレルギー性皮膚炎に対応した食材(例えば、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸など)を積極的に取り入れます。オメガ3脂肪酸は、抗炎症効果があり、痒みや皮膚の乾燥を抑えるのに効果的な食材です。
また、腸内環境を整えることが、全体的な免疫機能の改善に繋がります。特定のプロバイオティクスは皮膚の健康を支援し、アレルギー反応や炎症を軽減するのに役立つことが示されています。 - 乳酸菌サプリメント: 腸内環境の改善が全体的な免疫力向上につながるため、乳酸菌を含むサプリメントの投与が有効です。腸活フードや、サプリメントを含む栄養管理や、皮膚の健康を保つための継続的なケアが痒みを予防し、犬の生活の質を向上させます。
犬は自分ではケアができないため、飼い主さんが愛犬のケアをすることがとても大切になってきます。愛犬の痒みが気になる方は、痒みを防いだり軽減してあげるためにも、日頃から予防・対処法に取り組みましょう。
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まとめ
・犬が痒いときに一般的にみられやすい行動をチェックしましょう。
・犬が痒がる原因や病気はたくさんあるのでそれぞれ特徴を理解し、適切なアプローチをとりましょう。
・痒みの根本的な原因を特定するために、定期的な動物病院での診断や検査が必要になります。
・犬が痒身に対して、家でもできる効果的な応急処置は、患部への冷却、生活環境の整備、日常的なスキンケア、食事の見直しなどがあります。