この記事の著者

ペット栄養管理士 高山裕紀
「食事と健康のはなし」編集長。
ペットフード会社でドッグフードの開発を経験後に動物たちの健康寿命の延伸を目的に(株)topetを創業。
日本ペット栄養学会所属。ペット栄養管理士、犬の管理栄養士を保有。
はじめに
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早速今日の本題です。犬や猫と暮らしている方ならドライフードが良いのかウェットフードが良いのか悩まれたことがあるのではないでしょうか?今日はドライフードとウェットフードの特徴を比較し、犬や猫にとってのウェットフードのメリットとデメリットを紹介していきます。さらに、ウェットフードのおすすめの選び方をペット栄養管理士がレクチャーします。
ドライフードとウェットフードには水分量の規定がある

・ドライフード
・セミモイストフード
・ソフトドライフード
・ウェットフード
ペットフード協会ではフードの種類を水分量や発泡 (気泡が含有されており、粒が膨らんでいる) の有無から下記4つの種類に分類しています。
今日はこの中でも①ドライフードと④ウェットフードを比較していきたいと思います。
①ドライフード
水分10%程度以下のフードでいわゆるカリカリのフードのことをドライフードと呼びます。
②セミモイストフード
水分25〜30%程度の発泡していないフードをセミモイストフードと呼びます。フードを製造する際に、形状を作るために機械で高い圧力をかけるとフードの中に空気が入るのですが、空気が入っていないフードが発泡していないフードです。
③ソフトドライフード
水分25〜30%程度の発泡しているフードをソフトドライフードと呼びます。セミモイストと水分量は一緒ですが、機械でプレスして空気が入っている (発泡している) フードがソフトドライフードです。
④ウェットフード
水分75%程度のフードをウェットフードと呼びます。ドライフードやセミモイストフード、ソフトドライフードと比較して固形感が無く、明らかにウェットな見た目をしている点が特徴です。
ドライフードとウェットフードのどちらがおすすめ?

犬や猫の飼い主目線で気になる6つのポイントでドライフードとウェットフードを比較していきたいと思います。ドライフードやウェットフード選びの参考になればと思います。
・嗜好性(食いつき)
・栄養価
・カロリー
・保存性 (開封前)
・保存性 (開封後)
・費用
嗜好性(食いつき)
一般的に犬も猫も水分量の多い食事を好みますので、文句なしにウェットフードの方が嗜好性は高いと言えると思います。
ただし、ドライフードの嗜好性が低いという訳ではなく、ドライフードと比較してウェットフードの方が嗜好性が高いという意味合いです。
また、あまり嗜好性が高すぎると早食いする傾向がありますので、一度に与える量は調整してあげて下さいね。
栄養価
総合栄養食のドライフードとウェットフードを比較するならば、総合栄養食基準を満たしているという意味で、栄養価は同等だと考えられます。また、ドライフードは基本的に総合栄養食のフードが多いと思いますが、ウェットフードは食欲向上や栄養補助のための一般食や栄養補完食として販売されている商品が多いため、その点は注意が必要です。
カロリー
とあるドライフードとウェットフードの成分表を比較してみました。100gあたりのカロリーは圧倒的にウェットフードのが低いことがわかります。これは、ウェットフードのほとんどが水分ですので、その分カロリーは低くなります。
ドライフードA
エネルギー 407Kcal/100g
粗タンパク質 28%以上
粗脂肪 17%以上
粗繊維 3%以下
粗灰分 5.8%以下
水分 10%以下
ウェットフードB
エネルギー 103Kcal/100g
粗タンパク質 7.0%以上
粗脂肪 3.8%以上
粗繊維 2.2%以下
粗灰分 2.2%以下
水分 81.5%以下
保存性 (開封前)
ドライフードは水分含有量を10%以下に乾燥し、粒状とすることで長期間保存できるようになっています。そのため商品にもよりますが、凡そ1年から1年半を賞味期限としている商品が多いです。一方でウェットフードは内容物を缶詰やアルミトレー・レトルトパウチなどの密閉容器に充填し、加熱殺菌をすることで長期保存できるようになっています。そのため、賞味期限としてはドライフードよりも長く、凡そ2年から3年のものが多いです。そのため、開封前の保存性はウェットフードのが長いです。
保存性 (開封後)
開封後に意識しないといけないのは微生物の繁殖です。一般的に水分量が多い (≒ 水分活性が高い) 時に微生物が繁殖しやすいです。ドライフードはその名の通り水分量が少なく、ウェットフードは水分量がとても多いため、開封後に微生物が繁殖しやすいのは圧倒的にウェットフードです。そのため、ウェットフードは1度に食べる分だけを与えましょう。
費用
令和2年 全国犬猫飼育実態調査の結果 (一般社団法人 ペットフード協会) を参考にさせて頂くと、犬主食用フード1ヶ月の平均支出金額は¥3,304となっています。また、主食におけるフードタイプを比較するとその大部分 (70%強) がドライフードを利用していることから、ドライフードの1ヶ月平均支出は凡そ¥3,304程度ということになります。ウェットフードは市販のウェットフードの価格帯¥70〜 (1袋) を参考値として、小型犬でも1日少なくとも2袋をあげる必要があるため、”¥70×2(袋)×30(日) = ¥4,200″ となり、少なく見積もっても1ヶ月¥4,200円はかかることがわかります。猫についても同様の結果となりますので割愛しますが、ウェットフードは加工工程や密閉容器への充填、1袋が少量という点からも価格は高くなる傾向にあります。そのため、ウェットフードはドライフードより割高になります。
ウェットフードはどういった犬や猫におすすめ?

ドライフードとウェットフードを比較してきましたが、それぞれのメリットとデメリットがわかりました。それではどんな犬や猫におすすめかを解説していきます。
食が細い犬や猫
食いつきの良さはウェットフードが勝りますので、ドライフードをあまり好まない犬や猫にはおすすめです。ウェットフードは人肌程度に温めるとさらに嗜好性が上がりますので、喜んで食べてくれると思います。
水分を積極的に摂取しない犬や猫
この用途でウェットフードを使用される方が多いかと思います。ドライフードより圧倒的に水分量が多いですので、普段水分を積極的に摂取しない犬や猫にはウェットフードがおすすめです。
尿路結石症(尿結石)が気になる犬や猫
尿路結石症(尿結石)は水分補給が大切です。おしっこの量が減ることは結石を作るリスクを高めます。
どんなウェットフードを選ぶのがおすすめ?

ウェットフードの用途もしくは目的をチェック
ペットフードのパッケージにはフードの用途や目的を書く必要があります。ウェットフードに多いのは一般食といった表示ですが、ウェットフードのみを与えたい方は、総合栄養食の表示があるウェットフードを選びましょう。これは意外に見落としがちですので注意して下さい。
添加物をチェック
ウェットフードは水分量が多いため、開封後に品質劣化が早いです。そのため、品質を維持するための添加物を利用していることが多いです。その際は合成添加物が使われていないか必ずチェックするようにしましょう。添加物でも天然由来のものであれば問題ありません。添加物について下記の記事に詳しく記載しておりますので、ご確認ください。
主原料やアレルギーをチェック
原材料は配合量が多い順に表示されています。先頭にはお肉の種類 (鶏肉や鹿肉など) もしくは魚の種類が表示されていますので、好みにあったものであるかはまずチェックです。ここで注意が必要なのが、肉類といった記載が表示されている場合はイメージされている肉ではない可能性が高いため避けましょう。また、アレルギーが出やすいとうもろこしや小麦は避けてあげましょう。原材料表示ついて詳しい説明は下記の記事を参考にしてみて下さい。
ドライフードとウェットフードのミックスもおすすめ

ドライフードもウェットフードもケースバイケースで使い分けることが大切です。例えばあまり食欲がない時や、水分摂取が少ない子であったりする場合はウェットフードがおすすめですし、発育期など自由給餌させた方が良い場合はドライフードがおすすめです。さらには、ドライフードとウェットフードをミックスして与えてあげるとドライフードとウェットフードの良いところが合わさっておすすめです。
まとめ
・ドライフードとウェットフードの特徴を比較しました。
・ウェットフードがどんな犬や猫におすすめか、どんなウェットフードを選ぶべきかについて解説しました。
・ドライフードもウェットフードもデメリットとメリットがありますので、ケースバイケースで使い分けることやミックスして使用してあげることが望ましいです。