グレインフリーのキャットフードが近年人気を集めていますが、グレインフリーは2019年に犬の拡張型心筋症のリスクを高める可能性をデメリットとして指摘されています(※)。今日は猫にとってのグレインフリーのデメリットを栄養学的に徹底解説します。
Food and Drug Administration (2019) “FDA Investigation into Potential Link between Certain Diets and Canine Dilated Cardiomyopathy“
グレインフリー(穀物不使用)のキャットフードの特徴は?
米・麦・トウモロコシといった穀物を使用していないキャットフードをグレインフリーと呼びます。グルテンフリーとの違いや一般的なキャットフードとの栄養成分の違いを見ていきましょう。
グルテンフリーとは何が違うの?
グルテンは麦類に含まれるタンパク質から生成され、特に小麦から多く生成されます。
よく穀物(グレイン)とグルテンは混同されがちですが、グレインは穀物全般を指すのに対して、グルテンは穀物の一種である麦類に含まれるタンパク質から生成されます。
グルテンフリーのキャットフードは栄養成分が異なる?
グレインフリーのキャットフードでは穀物の代わりに豆類(エンドウ豆やひよこ豆)を使用するケースが多いです。そこで、豆類とキャットフードで代表的な穀物(米、トウモロコシ)の栄養素を比較してみましょう。すると、タンパク質量に大きな差が見られることがわかります。
また、グレインフリーのキャットフードは穀物を使用しないため肉の含有量を多くするケースが多いです。結果的に一般的なキャットフードと比べてタンパク質量が多くなる傾向にあります。あまり高タンパクであると猫に対してデメリットも出てきます。
エンドウ豆(青えんどう)に含まれる栄養素
エンドウ豆100gに含まれる各栄養素は下記の通りです。
エネルギー | 310kcal |
水分 | 13.4g |
タンパク質 | 21.7g |
脂質 | 2.3g |
炭水化物 | 60.4g |
灰分 | 2.2g |
ひよこ豆に含まれる栄養素
ひよこ豆100gに含まれる各栄養素は下記の通りです。
エネルギー | 336kcal |
水分 | 10.4g |
タンパク質 | 20.0g |
脂質 | 2.1g |
炭水化物 | 76.2g |
灰分 | 0.47g |
米(うるち米)に含まれる栄養素
米100gに含まれる各栄養素は下記の通りです。
エネルギー | 342kcal |
水分 | 14.9g |
タンパク質 | 6.1g |
脂質 | 0.9g |
炭水化物 | 77.6g |
灰分 | 0.4g |
トウモロコシ(黄色種)に含まれる栄養素
トウモロコシ100gに含まれる各栄養素は下記の通りです。
エネルギー | 341kcal |
水分 | 14.5g |
タンパク質 | 8.6g |
脂質 | 5.0g |
炭水化物 | 70.6g |
灰分 | 1.3g |
100g中に含まれる食品成分(文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより)
・グレインフリーのキャットフードとは、米・麦・トウモロコシといった穀物不使用のキャットフード
・グルテンは麦類に含まれるタンパク質から生成され、グレインは穀物全般を指す
・グレインフリーのキャットフードはタンパク質量が多くなる傾向にある
グレインフリーのキャットフードのデメリット
前の章では、グレインフリーのキャットフードはタンパク質量が多くなる・肉の含有量が多い傾向があることを説明しました。ここでは、これらのグレインフリーのキャットフードの特徴を踏まえて、4つのデメリットをご紹介致します。
高タンパクによる肝臓や腎臓への負担:デメリット①
前述のようにグレインフリーのキャットフードは穀物の代わりに豆類を使うことや肉の含有量を多くする傾向があることから、結果的にタンパク質量が多くなる傾向にあります。
高タンパクのキャットフードは肝臓や腎臓に疾患がある猫には控えるべきというデメリットがあります。
タンパク質は消化の過程で窒素となりその後アンモニアとなりますが、アンモニアは身体にとって有害物質ですので、肝臓でこのアンモニアを無害な尿素に変化させ、腎臓で尿として体の外へ排出します。
つまり、タンパク質量が多いグレインフリーのキャットフードは肝臓や腎臓への負担が大きくなります。
キャットフードの世界的な栄養基準を定めるAAFCO(2016)では幼猫が粗タンパク質30%以上、成猫が粗タンパク質26%以上としています。目安として40%以上の粗タンパク質が高タンパクの分類になります。
腸内環境を整える効果が低い:デメリット②
水溶性食物繊維は摂取することで善玉菌のエサになり、腸内環境を整える働きがあります。穀物には水溶性食物繊維を多く含むため、腸内環境を整える効果が期待できます。一方で豆類は不溶性食物繊維を多く含むため、グレインフリーのキャットフードは腸内環境を整える効果が低いというデメリットがあります。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は体内で水に溶けてゲル状になり便を柔らかくします。また、善玉菌のエサとなることで、猫の腸内環境を整える効果が期待できます。
不溶性食物繊維
便の量を増やして大腸を刺激することで排便を促します。しかし、猫は草食動物のように発酵槽を持たないため、不溶性食物繊維はすぐに大腸を通過してしまい、善玉菌のエサとなることで腸内環境を整える効果は発揮し難いと言われています(※)。
※ 石岡 克己 (2021) “犬と猫における消化器疾患と栄養”
一般的なキャットフード価格より高い:デメリット③
穀物を使用しない分、肉の含有量を多くする傾向があることや、腸内環境を整える効果が低いことから水溶性食物繊維などの機能性成分を配合するなど、一般的なキャットフードよりコストがかかっているため値段が高いというデメリットがあります。
健康リスクがゼロではない:デメリット④
グレインフリーは2019年に犬における拡張型心筋症のリスクがFDAにより指摘されました。この議論は科学的な根拠がまだ乏しく調査段階ではありますが、まだ実績の浅いグレインフリーのキャットフードが健康被害を与える可能性は決してゼロではないというデメリットがあります。
グレインフリーのキャットフードのデメリット
・高タンパクによる肝臓や腎臓への負担
・腸内環境を整える効果が低い
・一般的なキャットフード価格より高い
・健康リスクがゼロではない
グレインフリーのキャットフードが選ばれる理由
デメリットはわかったけど「猫は穀物を消化できないからグレインフリーが良い」「猫は穀物を食べるとアレルギーを発症しやすいからグレインフリーが良い」のでは?という疑問を持った方がいらっしゃるかと思います。これらの声に対しても回答しておきたいと思います。
猫は穀物を消化できないためグレインフリーが良い
私たちは米を生のままで食べたら消化できないため、ご飯を食べるときに必ず加水・加熱調理をしています。この工程をα化と呼びますが、α化が必要なのは人間だけではなく猫も同様です。
そしてα化していれば消化については問題なくできます。キャットフードは基本的にα化してありますので、消化の観点ではグレインフリーだから良いとは言えません。
猫は穀物を食べるとアレルギーを発症しやすいのでグレインフリーが良い
キャットフードに使用される穀物というと、小麦・雑穀・トウモロコシなどがありますが、アレルギーが比較的発症しやすいのは小麦とトウモロコシとなります。そのため、小麦とトウモロコシを使用していないキャットフードを選べばアレルギー対策としては十分であると考えられます。
小麦はグルテンがアレルギーの原因となりますが、同じムギ類でもライ麦や大麦などはグルテンをほとんど生成しないため問題ないと言えます。また、雑穀は栄養価が高く猫にとって大切なアミノ酸やビタミン類を多く含んでいることからも、グレインフリーのキャットフードが良いとは決して言えないです。
・猫はグレインを消化できない→α化しているため問題なく消化できる
・穀物アレルギーが怖い→発症率が高い小麦とトウモロコシを避ければ問題ない
愛猫の口腔ケアには「お口のふりかけ」
手間のかかるお口のケアが『削るだけで、簡単!』
・普段のごはんと一緒によく噛んで食べることで、歯垢・口臭を軽減!
・粒を専用ミルにいれて2~3回擦りながら、ごはんにかけるだけで手間いらず。
・1日55円からはじめられる!
まとめ
・グレインフリー(穀物不使用)のキャットフードの特徴として、栄養成分の違いが挙げられます。
・グレインフリーのキャットフードには、高タンパクによる肝臓や腎臓への負担など多くのデメリットがあります。
・キャットフードはグレインフリーではなくても十分消化でき、穀物アレルギーは小麦とトウモロコシを意識すれば良いです。